この秋、全国でロードショーされている映画『AALTO』
言わずと知れた、1900年代に活躍したフィンランドの建築家、アルヴァ・アアルト(1898−1976)の生涯について、その伴侶アイノ・アアルト(1894−1949)との関係性や彼の生み出した作品についてのドキュメンタリー映画です。
仕事柄、アアルトの建築の素晴らしさより、彼がデザインした家具や人間関係の方に色々感じるものが多い映画でした。
産業革命が起こった、18世紀半ばから19世紀にかけて、物作りが大きく変化していくわけですが、アアルトが活躍しはじめる20世紀初頭にその方向性が徐々に確立します。
さらにモダニズムの思想が頭角を表し始めたのもこの時代でした。
ドイツではバウハウスが設立され、過度な装飾を廃して合理性が追求されるようになり、当時活躍したミース・ファン・デル・ローエやマルセル・ブロイヤーなどは、スティールを使った椅子をデザインし世に広めました。
一方でアアルトは、北欧の国フィンランドで、図書館や療養所などを設計する過程で、内部に使用する家具もデザインしていていますが、ドイツでスティールを曲げたり溶接して椅子にいした同じ時期に、木をスライスした単板を積層し、型にはめて成形する技術で工業化した木製の椅子を作っていたというのはとても対称的で面白かったです。
やっぱりお国柄ですね。
アルヴァ・アアルトは、妻アイノと作品の中で二人三脚で活動するすることが多かったようですが、あまり家庭を顧みないところがあったご様子。
精力的に活動し留守がちなアルヴァは、アイノが寂しい思いをしていても、仕事に夢中でちゃんと取り合わないこともあったようです。
それでも、アイノは献身的に家庭を支えていたという件はなんとも言えない気持ちにさせられました。
それでも人たらしなアルヴァの交友関係は広く、建築を通じて、ル・コルビュジエやヴァルター・グロピウスら建築界の巨匠や、第二次大戦後アメリカでの仕事が増えていく過程で、富豪のロックフェラーとの出会いなど、様々な人が彼に影響を与えたようです。
こうしてアアルトの創造力を昇華していったんですね。
1949年アイノが病気で亡くなり、アルヴァ・アアルトはその後同じ事務所で一緒に仕事していたエリッサと再婚しますが、やはりアイノの存在は絶大で、少なからずアアルト作品に大きな影響を与えたとのは間違いないなというのが、この映画を通じてぼくが感じたことでした。
晩年、多大な影響力を持ったアルヴァに対し、批判的な意見もあったと言われていますが、1976年78歳でその生涯を閉じるまで、彼の創作に対する意欲は衰えることがなかったそうです。
1時間43分の映画でしたが、おもしろかったです。
ご興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。
いろんな感じ方がある映画だと思われます。
https://aaltofilm.com/