先月の高山出張の際、株式会社キタニのショールームで北欧の復刻家具の製作過程を撮影した動画が流されていました。
こういうの好きなんですよねぇ…
ひとたび見はじめると、その場から動けなくなる性格してます。
あらためてゆっくりと見たかったので、無理を言ってその動画を送っていただき、先日届きました。
Finn Juhl #No.53 Kitani FJ-01
家具の彫刻家とも呼ばれるフィンユールらしく、アームの先端部分の反りが特徴的なアームチェアです。
動画では、そのアームの加工の場面から始まり、本体の木部にクッション材を貼り付けて下地を仕上げていく様子、表面材である皮革張り手縫いで仕上げていく様子、最後に底布を釘打ちする様子などがダイジェスト動画でまとめてあります。
キタニが復刻している家具は、1950年代にデンマークでデザインされた椅子が多く、材料選別から製造の過程においては、到底量産という言葉が当てはまらない方法が取られています。
もともとキタニにとっての復刻家具とは、工場の技術者たちに古き良き時代に製作されていた製品を修理することで、その技術力を身につけさせる教育を行なったことから始まりでした。
結果として、本国デンマークでも途絶えた技術を継承するため、キタニがそれらの製品を日本での復刻を許されたことに由来しています。
今でも昔ながらの素材を使い、加工においても当時の手法をとっているのはその技術の継承であり、キタニのその技術への敬意であり、こだわりでもあります。
現代では、機械の加工技術が飛躍的に発達し、もはや人の手でやるとお恐ろしいほどの時間を要する加工が、その半分以下の時間で行える様になり、また中身に使用されるクッション材なども格段に進化して加工性が向上しており、その製造過程が大きく変化しているのも事実です。
キタニが継承し今なお続けている、昔ながらの製作方法は合理的生産方法とは言えないところも多くあり、全ての意味でその手法が優れているとは言い切れないのも事実です。
最近では当たり前になっている、デジタル音源をベースに打ち込みで制作された音楽と、アーティストが個々の楽器を演奏して制作される音楽とが存在するように、家具の製造現場においても同じなんですよね。
機械加工で多くの工程を行うと、型で押したような均一な製品が量産できる一方で、手作業の行程が多いモノには不均一なところが多く入る可能性が高く生産性も高くないため量産が難しく、価格も高くなる傾向にあります。
ニーズとしてどちらも必要で、特に後者を選ぶ場合にはその付加価値にお金を出せる納得性が必要ですよね。
数年前、エルメスの手仕事という展覧会を見に行きましたが、同じようなことやってました。
優れたデザインを実現する素材選び、難しい仕上げを実現する技術力、加えて決して品質に妥協しない丁寧なモノ作り。
人に感動を与える製品には共通している要素だと思います。
良いものはやっぱり良い。
美しいものってすばらしい。
あらためて認識させてもらえる動画でした。
いつかこの動画の上映会でもやってみようかなぁなんて考えてたりしてます。
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